〜ラテ・フラン・オレオとそのきょうだい 出産と保護までの経緯〜

私たちがブチの妊娠に気付いたのは10月初頭でした。(おそらく出産の2〜3週間前)
地域猫活動としては、このようなケースはなるべく早く不妊(=同時に堕胎もすることになる)することが鉄則とされています。
不妊去勢して頭数の増加を抑えたうえで世話をするのが地域猫活動の根幹であるからです。
また、実際問題としても猫が増えるとそれだけ管理が大変になります。

それだけではありません。赤ちゃん猫は産まれても全員が無事に育つことは殆どありません。
同腹のきょうだいには、必ず強い子と弱い子が現れ、
環境条件にもよりますが、母猫はより強い子を優先的に育て、弱い子は見捨てるのが自然の掟です。

人間側としては、産まれた以上、失われそうになる命も見捨てられないと考えるならば、
誰かが保護してミルクを飲ませなければなりません。
子猫の哺乳は最初は2時間おきで、昼も夜も関係なしです。なかなかできることではありません。

私たちが学生で、猫にかかりきりにはなれず、預かり先も見つかっていない。
更に盛岡は秋を迎え寒さが厳しくなってきており、赤ちゃん猫を外に置いておいたら助かる見込みは殆どない。
これらの状況を考えれば、堕胎しないで産ませても、苦しい思いをして死なせてしまうだけになる危険性が高いのは明白でした。

しかし、私たちには堕胎させる決心はつきませんでした。
命を守るための活動をしているのだから、積極的に堕胎して殺すことはしたくない。せめて生きるチャンスを与えたい。
という意見が多勢を占めたのが主な理由です。

また、その頃はサークル員が非常に多忙で、問題を先送りにしてしまっていたことと、
経験のなさから、出産予定時期まで余裕がないことを指摘されるまで見逃していたために、
どうするかの話し合いをする頃には、おそらく出産間近で胎仔の発達が進んでおり、
堕胎が非常にためらわれる状態となってしまっていたことも影響しました。

結果として、私たちは 出産をさせて、産まれた猫は今住み着いている空き家で、温めたり世話をして生きのびさせる
そしてなるべく早く預かり先を探す 、という選択肢を取りました。
しかし、すぐにその考えが甘いものだったということを思い知ることになりました。

出産後1週間程度と思われる子猫たち4頭を見つけ、世話を開始しました。
発泡スチロールと毛布、ホッカイロで温かい場所を作り、
母猫にはたくさん餌をあげる
それ以外はあまり介入しないようにし、育児放棄しないよう見守る
という方針を取り、最初は赤ちゃん猫たちも元気にほほえましい姿を見せてくれていました。
何日かは元気そうに動き回り、ミャーミャー活発に鳴いていたので、母猫もちゃんと世話をしているのだろう、と思っていました。

しかしある日見に行ってみると、前日まで元気に鳴いていた子猫たちの一匹が、亡くなってしまっていた のです。
体は硬直が始まっていましたが、まだかすかに暖かく、亡くなってからそう時間は経っていないことが推測されました。
生き残っていた3匹も、前日とは比べものにならない位弱ってしまっていました。

夜の冷え込みがきつかったのか、何かの病気に罹ってしまっていたのか、
弱っていた子は母親が授乳をやめてしまったのか、原因は分かりません。
その姿はあまりにも痛々しく、ただただ衝撃を受けました。
この時期に外で生き延びさせるなんて無理だったのだ、とその時になって悟りました。

どうしよう…となっていた所、本当に幸運なことに、ちょうど、預かりができるという方からご連絡があったため、
急で厚かましいお願いではありましたが、保護をお願いしました。
翌朝動物病院に連れて行って治療してもらい、預かりの方に引き渡しました。

今は3匹とも、無事に育てていただいています。数ヵ月後には里親さんを探す予定です。
しかし保護してからも、特に弱っていた一匹(ラテ)は一時は命の危険があり、
預かりさんの必死の看病で何とか持ち直してくれたから良かったものの、今も他の2匹と比べ発達が遅れています。


私たちの選択が間違っていたのか、今でも分かりません。
頑張って生きている3匹を見ると、単純ではありますが、この子たちの命を奪わなくてよかった、と感じる心がたしかにあります。
しかしそれは、本当に有難いことに預かりさんが来てくれたからできたことで、
その幸運がなければ、結局は全員死なせてしまったのではないかと思います。

自分たちで責任を持って猫の哺乳から譲渡までお世話できればいいのに、
それができない学生の身分を非常に歯がゆく感じます。

今後もし同じようなことがあったら(不妊は全頭済ませたので、ないはずではありますが)、
今度は迅速に適切な行動を取らなければならないと思います。
堕胎をする、という私たちにとっては辛い選択でも、生命の質を重んじるならば、それを選ばなければならない時もあるでしょう。
その時のため心構えをし、それを今後猫の管理を引き継いでもらう後輩にも伝えていくことが、
今私たちにできる最大限のことだと思い、尽力していく所存です。
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